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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 これからの世界経済と相場展開は?

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、今月8~12日に64人のエコノミストを対象に調査を実施した。全員が全項目に回答したわけではないが、WSJがまとめた月次調査によると、4-6月期のGDP成長率予測は年率でマイナス32%。ただ、大半のエコノミストは今年後半に景気回復が始まり、7-9月期のGDP成長率については年率9%、10-12月期の予測は6.9%となっている。 今がまさにどん底で、聞いたことのないマイナス成長だ。

この調査によると、連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利をゼロ近辺に引き下げたほか、大規模な国債購入を行い、米企業への貸し出しを開始したことに対する評価は高い。パウエル議長の新型コロナウイルス感染拡大の対応は回答者の71.9%は「A」評価をつけている。

そんなパウエル議長は「この下降局面の規模とスピードは現代において前例がなく、第2次世界大戦以降のどのリセッションよりもはるかに深刻だ」と強調している。 パウエル議長は、必要であれば出来ることは何でもやると宣言しているが、金融政策で出来ることに限界も感じているようだ。

今後のマーケットを見る上でのポイントは、4-6月期のGDPの水準そのものよりも、7-9月期にどれ位成長できるかにかかっている。4-6月期の経済指標が弱いということは市場は織り込んでいる。4-6月期の谷が深ければ深いほど、反動増は大きいと考えるのが自然だ。今年の夏の相場は3月以降の相場で叩かれたマーケットが大きく戻す展開もあり得る。簡単に言えば、あの騒ぎは何だったのだろうという相場展開となってもおかしくはない。

10-12月期のことはまだ誰にもわからないので、議論するのはまだ早い。第2波次第だ。10-12月期に第2波が広がってしまうか、人類の知恵で回避できるか、今の段階では予想しようがない。

因みにスペイン風邪では、第2波で多くの死者が出たそうだ。TBSの報道によれば、日本人はスペイン風邪の第1波での犠牲者はゼロ。犠牲者の大半は第2波だったという。そうは言っても、当時はそもそも戦時下であり、今とは医療技術、世界の人口、移動手段などが大きく異なるので、比較することは難しい。変に恐怖心を煽るだけなのかもしれない。

新型コロナウイルス感染拡大で大きく変わったのが、ヒトの流れと消費行動だ。ヒトの流れについては、リモートでの会議、授業、セミナーが拡大した。消費行動では、ますますネットでの消費が拡大した。7-9月期はこのヒトの流れがどうなるか、消費行動にどのような変化があるかにかかっている。元には戻らないというのがコンセンサスだとすれば、新しいビジネスが既存の傷ついたビジネスをどれだけ埋められるかにかかっている。

この2-3年、仮想空間と現実空間の融合がこれからの世界だという話をよく聞くようになってきた。昭和世代の私には難しい問題だ。でも理解がちょっとだけ進んだような気がする。今までは旅に出る。その街の美術館に行く。そこで素晴らしい作品との出会いがある。作品集をお土産に買う。美味しいものを食べる。全てが現実空間での出来事だ。旅に出ると、思ってもいなかった発見に心を動かされる。でもそれをSNSにアップすることにより、仮想空間とのつながりが始まる。仮想空間で出会った素晴らしい景色、作品を見に行くために、美味しいものを食べるために旅に出る。仮想空間と現実空間のつながりだ。

移動を制限された今、仮想空間と現実空間の融合が許されないという新しい世界が始まったような気がする。今回の新型コロナウイルス感染拡大はこの仮想空間から現実空間へのつながりを人工的に遮断した。

今まではバーチャル美術館というものがあることすら知らなかった。仮想空間の中でどこへでも旅に出て、美しいものに触れることが出来る。その中で完結している。

仮想空間と現実空間との融合をやっと理解したつもりになっている昭和世代のおじさんは、仮想空間のなかだけで完結する世界に動揺している。

こういう時代のGDPの計算は今までと同じ計算の仕方で良いのだろうか?付加価値をどのように集計すれば良いのか?

こういう時代の景気刺激策って金融緩和じゃないよねっていう気がしてきた。意図せざる不景気で、過剰人員、設備、在庫が作られた。あっという間に過剰な状況は改善し、最近では見られなかったような景気回復が見られるかもしれない。逆に、思ったより、景気回復のペースはゆっくりかもしれない。年後半から来年に向けての相場を考えるにはもう少しこれからの世界を考えないといけない。50年に一度の大相場が来るかもしれない。

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