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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 グローバルマーケット(週次)

米WTI原油先物の期近5月物は史上初めてマイナス圏に陥ったのが最大のニュースだろう。

野菜や果物が豊作で、その値下がりを防ぐために廃棄処分にするという話を聞くことがあるが、どうやら原油がそういう状況に陥っている。30年以上グローバルマーケットを追いかけてきた私だが、WTI原油先物は実際にトレードしたことはなく、差金決済ではないという事実を知らなかった。

産油国が13日に日量970万バレルの協調減産で合意したが、原油安が止まらない。先物市場の限月交代に係るテクニカルな動きもあるのかもしれないが、買い手がほぼ完全にいなくなる中、原油を保管する場所もなく、金を払ってでも貰って欲しいという状況だ。

6月物は17.18とプラス圏での越週となったが、今後の動向が気になる。世界経済減速、石油需要の激減、ということのみならず、原油価格の行方は世界中のインフレの動向を左右するからだ。

今回のリセッションでは、マスクなど医療品の一部では値上げを余儀なくされるものも出てきてはいるものの、世界的なデフレとの闘いになるかもしれないからだ。どうやって闘うのだろうか?

既に世界中が超低金利の状況だ。世界中の中央銀行が出来ることは今まで以上に異次元質的量的緩和政策だ。先進国の財政は既に大赤字であるものの、異次元財政政策を行わざるを得ない。

世界中で行っている感染症拡大防止策は、ヒトの流れを止め、人工的に不景気を作り出すことだ。不景気になるのはある意味仕方がない。不景気にならないとすればこれからもがんがん感染拡大が進むだろう。それではますます困る。従って、ヒトの流れを止めて、感染拡大を防ぎ、不景気にはなるが、一時的に金融政策・財政政策総動員で経済を支えることが必要になる。

いよいよMMT理論提唱者が勢いづきそうな展開となってきたが、気をつけないといけない。私は、国が借金をして、中央銀行が金を刷ってそれを引き受けることは限定的なものにしないといけないと思っている。緊急事態では仕方がない。しかしながら、本来、景気は良くなったり、悪くなったりするのが当然であり、今の政策は明らかにグローバルマーケットを歪めている。

この歪みが大きくなればなるほど、何かあった時の市場の変動はより大きいものになる。

仮にMMT理論が正しいとすれば、どうして「マネタリーベースをがんがん増やし、マネーサプライを増えし続けた」日本が、インフレになるどころか、長い間デフレに苦しんだのか?

各国の中央銀行、政府が、これから異次元金融・財政政策を強化したとしても、感染拡大が早期に収まらない限り、おそらくデフレと闘わないといけない状況になる。今後の原油価格の動向次第では、とんでもないことになるような気がしてきた。

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