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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 1/22/2021

アメリカでは、20日に大統領就任式が行われ、バイデン氏が第46代の米大統領に就いた。この就任式を単なる形式的なイベントだと考えている人も少なくないと思うが、そんなことはない。こんなに世の中が分断していても、ペンス副大統領が登場した時の歓声は、歴代大統領の登場以上に大きかった。新大統領が合衆国最高裁判所長官の面前で「合衆国大統領の職務を忠実に遂行し、全力を尽して合衆国憲法を維持、保護、擁護することを厳粛に誓う」宣誓を行い、共和党、民主党の二大政党が互いを認め、国歌を斉唱し、新政権が始まる。こんな素敵なイベントに、トランプ大統領が参加しなかったことはとても残念だ。


自分の子どもが自分以上に充実した人生を送ることが出来るかと悩んでいる親が多い。夢を描けず、悩んでいる若者も多い。世界中で共通する問題だ。そんな時に「大丈夫だ。自分が助けてあげるよ。素晴らしい、夢の持てるアメリカを再び創ろう!」と呼び掛けたのがトランプ氏だった。このトランプ氏をサポートするアメリカ人とサポートしないアメリカ人が過去にないぐらい分断してしまったのが今のアメリカだと私は思う。その一部が過激化したトランプ支持者だが、殆どの人は普通のアメリカ人だ。


バイデン新大統領は、「さあ、みんな結束しよう!」と呼び掛けているが、従来の共和党、民主党か掲げる機会の平等、結果の平等という違いだけではない難しい問題を抱えている。「夢の持てるアメリカを再び創ろう」というメッセージに共感したトランプ支持者に向き合う必要がある。2020年からの反動もあり、2021年のアメリカの景気を心配することはないだろう。それでも次の大統領選までの間に一度は経済成長の伸びは鈍化するだろう。その時がバイデン政権にとっての正念場だろう。


アメリカの株価は史上最高値を試している。富裕層と貧困層の分断は足許さらに広がっているが、世界経済にとって、分配できる富を生みだすことは必要なことだ。今アメリカの株価が下値を試したら世界経済はとんでもないことになる。従って、当面FRBによる金融引き締めが実施されることはない。イエレン新財務省長官は、労働経済の第一人者だ。上院財政委員会の公聴会でも、労働者の置かれた状況を最優先課題として取り組む考えを示している。


それにしても、FRB、ECB、そして日銀のバランスシートが、2020年に合計約8兆ドルも拡大しているが、これは異常としか言いようがない。そして、これからも拡大していく。当面の間、過剰流動性がリスク資産に流れる動きは止まりそうもない。


公的機関がバランスシートを拡大することにより、ますます格差は拡大し、世の中の分断は深まっているのが実態であり、何が正解で、何が不正解なのかわからない状況だ。バイデン新政権による政策がアメリカ経済にどのような好影響を与えるか、本当に2021年のアメリカの経済成長が5%を超える強さを示せるかに注目したい。


リスクはひとつ。市場参加者は、バイデン新大統領が実施する経済対策ばかりに注目しているが、格差を解消するために3兆ドルに及ぶ企業・富裕層増税を実施するという公約を掲げて大統領になったということも忘れてはいけない。公約に掲げた以上、いつかは増税が始まる。


株式市場は全般的に底堅い推移を続けている。国債市場では全般的にイールドカーブがスティープニング。欧州では、政局不安を受けて、イタリア国債が売られている。政治的には、大統領就任式が終わり、一旦落ち着いたアメリカ。欧州は、今年はメルケル独首相の後継者問題など、政治リスクを抱えた一年になりそうだ。


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