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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 グローバルマーケット(週次)

世界的な経済再開に向けて、株は堅調、米国債・独国債・日本国債のイールドカーブはスティープニングしている。為替は対ドル、対ユーロで円高。原油安は一服、金は反落。

アメリカでは、失業者が国中に溢れ、失業率が急上昇しているのに米株式市場は上値を試し、米国債金利は上昇している。何故か?

昨日発表された米雇用統計は悪かったものの、市場予想ほどは酷くなかったので、ひと安心ということだ。それにしても、数十万人規模の新規雇用が生み出され、失業率は約50年ぶりの低水準で推移していたアメリカの労働市場は、新型コロナウイルスの拡大でその様相が一変している。

4月の米雇用統計は、非農業部門就業者数(季節調整済み)は前月比2,050万人減と、過去最大の減少幅となり、失業率は14.7%に達した。失業率は、これまでの過去最悪だった10.8%を上回った。 第2次世界大戦が終わった1945年でも、1カ月で失われた雇用は約200万人。 平均時給が前年同月比で7.9%上昇。これは多くの低賃金労働者が失業したということだろう。アメリカの格差はますます広がる。

50年ぶりの結果ということは、殆どの市場参加者にとっては初めて見るマーケットだ。世界大恐慌以来のマーケットで、何が起こるかわからない。

最も楽観的な投資家は、世界中の中央銀行が金融市場を支える。その間にワクチン・治療薬が開発される。経済も再開を始め、世界経済は回復する。

最も悲観的な投資家は、ヒトとモノの流れが再開するのは思っている以上に時間がかかる。原油価格も需要減で低位推移するとすればデフレも心配だ。感染拡大が止まらなければ、外出禁止・自粛を継続する必要があり、世界中の中央銀行が金融市場を支えるものの経済活動の再開が遅れ、大幅な需要減から世界大恐慌となる。

実際の世界経済の行方は、この両者の間のどこかになるだろう。私は最も楽観的なシナリオと悲観的なシナリオを考えた上で、その両方のシナリオがどのように実際のマーケットの動きと乖離するのかを見ながら、トレードするタイプだ。相場観としては、世界経済が良い方向に動き出すことを期待した相場展開となるが、色々な問題がでてきて株式市場が下値を試ようなすリスクオフいう相場になるような気がしている。引き続きクレジット市場が気になっている。

労働省は「コロナウイルスのパンデミックとその防止策の影響が反映された」と説明しているが、まさにその通りだと思う。感染症の拡大を封じ込めるために人工的に不景気を作り出したということだ。

人工的に作り出した不景気をどうやって人工的に景気回復へ導くかがこれから夏場に向けてのグローバルマーケットのポイントだ。

来月発表される5月の米雇用統計では、確実に雇用者数が一段と減少し、失業率はさらに上昇するだろう。それ自体は、マーケットは既に織り込んでいる。そして、最悪期を脱するのは、経済再開が始まる6月というところまでがコンセンサスになるとすれば、7月に発表される6月の米雇用統計には注目が集まるだろう。

今週の欧州市場では、気になるニュースがひとつ。

ドイツ憲法裁判所がECBの量的緩和政策(QE)を一部違憲と判断したため、今後の債券購入に疑念が生じている。ドイツなどユーロ圏の金融政策を担うヨーロッパ中央銀行が進める国債などの買い入れについて、ドイツ憲法裁判所は、違憲にあたる部分があるとしたうえで、3か月以内に政策の必要性が証明されなければ、ドイツの国債買い入れを停止しなければならないという判断を示した。欧州司法裁判所(ECJ)は、EU機関による違法行為を判断できるのはECJだけだと強調し、ドイツ連邦憲法裁判所の動きをけん制したことから、今週イタリア国債は対独国債で大幅にアンダーパフォームしたが、週末に向けては値を戻して越週している。

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