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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 インフレ率の上昇が止まらない グローバルマーケットウィークリー 1/14/2022

更新日:2022年1月17日

アメリカの金融政策の最重要課題が「インフレ抑制への取り組み」にシフトしている。


パウエルFRB議長は、サプライチェーンの目詰まりが年内に緩和され、インフレ抑制の一助になるとの見方を示すと共に、景気を冷やすため利上げに着手する用意があると述べた。また、バイデン米大統領がFRB副議長に指名したブレイナード理事はインフレ抑制への取り組みがFRBの最重要課題だと述べた。FRBが経済全体の需要を冷やすために利上げを行う用意があるということだ。


斯かる状況下、21年12月の小売売上高は前月比1.9%減少した。10カ月ぶりの大幅な落ち込みだ。また、21年12月の鉱工業生産指数は、製造業生産指数が前月比0.3%低下した。加えて、米ミシガン大学が発表した1月の消費者信頼感指数は68.8と過去10年間で2番目の低水準となった。


にもかかわらず、何故債券が買われないのか? 


FRBによる利上げの方針に影響を与えそうにないからだ。投資家は気をつけた方が良い。リーマンショック以降は株が崩れ、債券が大きく売られ金利が上昇すると、FRBが金融緩和を実施し、金融市場を安定させてくれた。そのFRBがいよいよ金利上昇のきっかけをつくる側に回るのだ。デフレからの脱却も難しいが、インフレ退治も難しい。FRBにとっての最重要課題がインフレ退治になった以上、アメリカの金利の本格的な上昇はこれから始まる。


そんな中、新型コロナの感染拡大が止まらない。日本でも16日、新型コロナの感染者が新たに東京で4172人、大阪で3760人の感染が確認されるなど、感染拡大が止まらないが、我々が特に注目しないといけないのは中国の状況だろう。中国全土で新型コロナの感染が広がっていることにより、主要メーカーの工場閉鎖や港湾施設での滞留、労働者の不足といった問題が起きている。そして今回は、中国当局が大掛かりなロックダウンや大量検査を導入している。北京オリンピックを控えていることもあり、中国が「ゼロコロナ」政策を堅持することは間違いない。これにより、サプライチェーンは正常化するどころかさらに混乱するかもしれないと言わざるを得ない。


仮に中国のサプライチェーンの目詰まりがグローバルにインフレ率を押し上げることに繋がれば、FRBは一時的なインフレ率の上昇とは言わないだろう。アメリカの金利は上がる。


日本にとってはもっと深刻だ。日本の21年12月の国内企業物価指数は、前年比プラス8.5%だ。世界的な物価の上昇は当面続きそうであり、円安が輸入物価をさらに押し上げている。輸入物価指数は同プラス41.9%という状況だ。政府からの賃上げ要請、物流コストの上昇、円安の悪影響など、日本企業には頭の痛い問題が山積みだ。


日銀は今頃になって物価上昇の持続性で詳細な分析を行うとのことだが、一体どうするつもりなのか?


コアインフレ率が2%に達するのは時間の問題だ。にもかかわらず日銀は、引き続きETFを買っている。確かに、デフレからの脱却がこんな形で実現するとしても、企業が内部留保を投資に回すどころか、さらなるコストカットで対応することになるかもしれない。そんな状況では、日銀は金融政策の正常化に動き出すどころか、更に金融を緩和する必要がでてくるかもしれない。MMT論者にとっても厳しい展開だ。インフレが顕在化したら、財政政策は増税に転換し、インフレを退治しないとならない。引き続き需給ギャップを解消しないとならない状況でありながら、コアインフレ率が日銀のターゲットを上回る。何とも苦しい展開だ。


日本の投資家にとっては、1-3月期は、年度末だ。そろそろ年度の収益の着地を探る時期だ。ポートフォリオマネジメントという観点からは、リスクオフ相場に備えておいた方が良いだろう。





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