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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 金利上昇は始まったばかり!グローバルマーケットウィークリー 2/11/2022

予想を大幅に上回るアメリカの雇用統計を受け、米10年債利回りは13.8ベーシスポイント(bp)上昇の1.916%、米2年債利回りは14.4bp上昇の1.316%で今週のマーケットは始まった。地政学リスクの高まりはあるものの、米2年債の金利上昇は止まらない。結局米2年債は17.1bp上昇の1.487%での越週となった。引き続きイールドカーブはフラットニングしているものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が、利上げを急ピッチに進めたとしても、米経済がそれに耐えられる可能性が高まってきていると市場は考え始めたかもしれない。だとすると、今後長期セクターが大きく売られることも想定しないといけない。


エコノミスト、アナリストの中には、1月の米雇用統計は、約2年間続く新型コロナウイルスの影響から、季節調整自体に歪みが生じていることは明らかだと主張する向きも少なくない。


仮にそうだったとしても、FOMCメンバーが注目しているのはインフレ動向だ。平均賃金は前年比5.7%増と前月(同5.0%増へ上方改定)から一段と伸びが加速している。10日に発表された1月の米消費者物価指数(CPI)は、前年同月比7.5%上昇。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年同月比では6%上昇し、米国債は大きく売られる展開となった。このまま物価が急ピッチで上がり続ければ、FRBは債券市場が示唆している水準以上に金利を引き上げることになるだろう。


FRBがFFO/N金利を2%を上回る水準まで引き上げるとすれば、今年すでに75bp金利上昇している米2年債利回りは更に上昇し、当然2%を上回る水準まで売られるだろう。イールドカーブがフラットニングするとしても米10年債利回りは2.5%を試す展開となってもおかしくはない。


イギリスでも賃金の上昇を抑制しなければインフレが制御不能になる恐れがでてきている。加えて、中国が春節明けに原油在庫の積み増しに再び動く可能性が高いと言われており、原油価格が1バレル100ドルを超えるのは時間の問題かもしれない。


従って、FRBによる利上げ回数が増え、利上げ幅が大きくなるリスクが高まっている。米国債の金利上昇はまだ始まったばかりだ。


日本については、日本労働組合総連合会の芳野会長は日経新聞のインタビューに「賃上げ率はこの2年、2%を切った。業績が改善し将来見通しが確実になってからという、後追いの賃金決定だった」と語っており、残念ながらアメリカ、イギリスとは状況が大きく異なる。賃金上昇が鈍い中、今後も輸入物価は大きく上がり、モノの値段があがっていく。悪い物価上昇だ。企業努力により価格転嫁を抑えていくとすれば、企業にとっては、ベースアップの要求を受け入れるのはますます難しい。


注目しないといけないのはグローバルのインフレ動向だけではない。地政学リスクが更に高まり、市場の変動率(ボラティリティ)は上昇している。


バイデン米大統領は7日、ロシアがウクライナに侵攻した場合、ロシア産天然ガスをドイツに輸送する「ノルド・ストリーム2」は稼働させないと述べた。既に経済的な戦争は始まっていると言ってもおかしくはない。加えて、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は11日、ロシアによるウクライナ侵攻はいつ開始されてもおかしくはないと指摘。おそらく空爆で始まるとの見解を示した。その上で、プーチン大統領は今月20日の北京冬季五輪閉幕前にも侵攻を命令する可能性があり、首都キエフに対する急襲も考えられるとの見方を示した。この報道を受け、金曜日のマーケットでは米株が下値を試す展開となり、米国債はショートカバーが入っての越週となった。


米政府は、ウクライナ国内にいる米国民に対し24-48時間以内に退避するよう呼び掛けた。日本の外務省も、ウクライナの危険情報を最高度の4に引き上げ、滞在する邦人に直ちに退避するよう勧告している。ウクライナ情勢は緊迫している。


過剰流動性相場がいきなり終焉するわけではないものの、金利上昇が続く中、地政学リスクが高まっており、当面リスクオフの展開が続きそうだ。





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