top of page
執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 これからどうなるかはわからない グローバルマーケットウィークリー 2/25/2022

国連安全保障理事会は、ウクライナに軍事侵攻したロシアを非難し、武力行使の即時停止と撤退などを求める決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使、否決された。また、中国、インド、アラブ首長国連邦の3か国が棄権した。


常任理事国が行うことは仮に国際法に違反していても咎められることはないということなのか?仮にそうなのだとすれば、常任理事国という国連の仕組みが機能していないということになる。また、決議案の是非についてその判断を棄権している国もあるということも忘れてはいけないだろう。


グローバルマーケットの市場変動率(ボラティリティ)は急上昇している。仕事なので仕方がないが、株式は売られすぎ、等語るストラテジストがいるが、斯かる状況下で何故そんなことが言えるのか不思議でならない。ロシア、ウクライナ政府で働いているわけではないし、これからどうなるかは金融機関で働いている人にだってわかるはずがない。停戦合意に1週間で達するかもしれないし、1年かかるかもしれない。1週間で合意すれば株式市場は上値を試し、この問題は忘れ去られるし、1年かかるのであれば、ロシアへの経済制裁が継続するわけで欧州のエネルギー供給は厳しい状況になる。株式市場は下値を試すだろう。斯かる状況ではボラティリティが高まり、荒っぽい値動きになる。今私たちに出来ることは様々なケースを想定し、その場合どのようなマーケットになるか考えることしかない。


週末にかけてはの値動きは興味深いものだった。ウクライナ情勢が緊迫し株が売られても米国債が買われなくなった。これは今までにはなかった値動きだ。連銀の高官の発言からも明らかだが、ウクライナ情勢に関係なく、FRBによる利上げは実施されるというコンセンサスが浸透してきたのだろう。


ボラタイルな展開は今後も続く。リスクをとる必要がない人は何もこんな時に自分が一生懸命稼いだお金を金融商品への投資に注ぎ込む必要はない。やっぱりあの時に買っておけばよかった、売らなければよかった、また、その逆も後からしかわからない。金曜日の底値で買って金曜日の高値で売った人は大儲けだ。しかしながら、それは博打と一緒だ。金曜日に慌てて売って、しまったと思って慌てて買い戻した人は、株価が回復してよかったと思っていても、月曜日に急落すれば大損だ。どうしても投資をしたいという人は、損をしたとしても許容できる範囲で行うべきだと私は思う。


地政学リスク。最も市場関係者にとっては管理しにくいリスクだ。わかりやすく言えば、「これからどうなるかはわからない」リスクだ。私たちにとっては市場リスクのひとつだが、命がけで闘っている人がいる。安易な気持ちで金融商品の売買を実施するべき時ではない。


今の状況から考えるとなかなか外交的な解決は考えにくい。そうは言ってもロシアだって戦争をしたいわけではないだろう。残念ながら停戦合意にはかなりの時間がかかるのではないだろうか?その場合、欧州としては今まで通りロシアからのエネルギー供給を受け入れたいものの、それは出来ないだろう。欧州各国は、国際法違反として国連に提出された議決案に賛成しているのだ。ということはエネルギー価格が今後も上昇を続ける可能性が高いと考えるのが自然だ。


そうなると言っているわけではないので誤解して欲しくないが、停戦が合意に至らないとすれば、日本の輸入物価はこれからも上昇し続ける可能性が高まっているということだ。今年の大きなテーマは高騰するエネルギー価格、急騰する輸入物価に日本企業はどのように対応するかになるのかもしれない。


2020年10月、日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言した。これを実現させるためのロードマップは希望的観測としか言いようがない。原発も増やし、再生エネルギーも今の何倍も供給できるような世の中にしないといけないのに、この問題になると原発賛成・反対の話になり、双方が原発の問題点、再生エネルギーの問題点ばかりを強調する。本来であれば、原発・再生エネルギーの専門家が一丸となって取り組まないといけない問題なのに対立軸ばかりをあおっている状況だ。誰が悪い、あの時の政権がとか、そんな話ばかりだ。これでは日本の技術は世界に置いて行かれるし、新しいことにチャレンジしようとする人は海外に出て行ってしまうだろう。エネルギー価格の急騰懸念がある中、待ったなしに取り組まないといけない問題なのに。


そんな中、岸田首相が経済界に「3%賃上げ」を要請し、連合の芳野会長は「日本の賃金は20年以上にわたって上がっていない」とベア2%、定昇を合わせて4%の賃上げを目標に掲げている。確かに日本のデフレからの脱却に必要なことは賃金の上昇だろう。しかしながら企業の生産性が上がらない中での賃金の上昇はその企業の生産性の低下に繋がる行動だ。これが新しい資本主義というものなのだろうか?


生産性が向上し、最高益をたたき出している日本企業はどんどん賃上げを実施すべきだが、新型コロナ、ウクライナ情勢など、社会的に不確定要因が多い状況で、そうではない会社が税の優遇を根拠に賃上げを実施するとすればそれらの企業の先行きは危うい。世界から注目される個別には素晴らしい企業があるものの、日本株全体にはブルになれない自分がいる。





株式会社ランプライターコンサルティングは、当サイトに掲載している情報の正確性について万全を期しておりますが、その内容について保証するものではありません。当サイトでは、信頼できる情報源から得た情報を、確実に掲載するようあらゆる努力をしておりますが、株式会社ランプライターコンサルティングは、間違い、情報の欠落、あるいは、掲載されている情報の使用に起因して生じる結果に対して一切の責任を負わないものとします。当サイトに掲載されている全ての情報は、その時点の情報が掲載されており、完全性、正確性、時間の経過、あるいは、情報の使用に起因して生じる結果について一切の責任を負わないものとします。また、あらゆる種類の保証、それが明示されているか示唆されているかにかかわらず、また業務遂行、商品性、あるいは特定の目的への適合性への保証、また、これらに限定されない保証も含め、いかなることも保証するものではありません。

閲覧数:38回0件のコメント

Comments


bottom of page