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篠原金融塾 ドイツ国債 トランプ関税 グローバルマーケットウィークリー 3/7/2025

執筆者の写真: 篠原竜一篠原竜一

米大統領執務室におけるトランプ大統領とゼレンスキー大統領の映像は、特にヨーロッパの政治家に大きな影響を与えるものだった。ヨーロッパ大陸の防衛は同盟国のアメリカに頼ることは出来ず、自力で防衛する必要があると再認識させられたのだろう。


欧州の財政規律は、EU加盟国が健全な財政運営を維持するためのルールや基準を定めたものだ。その骨格は、マーストリヒト条約(1993年発効)により、加盟国は財政赤字を対GDP比3%以内、債務残高を対GDP比60%以内に抑えることだ。単一通貨を採用したユーロ圏にとって、非常に重要なルールだ。


しかしながら、長年にわたり財政保守主義を続けてきたドイツが、その考え方を劇的に転換する可能性が高くなってきた。米国がヨーロッパ安全保障への関与を後退させたことを受けて、欧州の指導者たちはロシアの脅威に対抗するため迅速に追加の防衛費を動員しようとしている。


欧州委員会とドイツの次期首相候補のメルツ氏が話し合っている新たな借入れによって、軍事費として数千億ユーロもの資金が調達される可能性がでてきた。また、フランスのマクロン大統領は、フランスの保有する核兵器による抑止力でヨーロッパの同盟国の保護する議論を行うと発言した。足許のヨーロッパは、経済よりも軍事重視へ舵を切らざるを得ないのかもしれない。


加えて、トランプ関税は脅しだと考えていたマーケット参加者は、その考えを改めさせられた。必ずしもそうなるかはわからないが、過去の経験からは、貿易障壁が高くなれば、世界の生産性と成長率は低下する。そして、報復措置によって、貿易障壁はさらに高くなっていくかもしれない。グローバリゼーションの巻き戻しの動きと軍備の再増強が多方面に大きな影響を与えるのは確実だ。


先週、ドイツの防衛およびインフラ投資に数千億ユーロを投入するための大規模な財政改革案が発表されたことを受け、ドイツ国債の発行増をマーケットは嫌気し、ドイツ国債は暴落した。ドイツ国債の急落は世界中の債券市場に波及し、フランス、イタリア、イギリス、日本、オーストラリア、ニュージーランドなどの国債利回りも急上昇することに。


ドイツ国債の下落はどこかで止まるのだろうが、下値の目途はない。どこまで売られるかはわからないというのが正直なところだ。ドイツでは株式市場は、軍需産業中心に買いが入ったものと思われるが、グロ-バルに株式市場のボラティリティーは上昇しており、不安定な状況が続くだろう。


そんな中、欧州中央銀行(ECB)は6日、市場予想通りに0.25%の利下げを実施したが、緩和局面が終わりに近づいていることを示唆したことは気になる。


アメリカでは、連邦公開市場委員会(FOMC)が3/18、19に開催される予定だが、12日に発表予定の2月の消費者物価指数(CPI)に注目だ。食品とエネルギーを除いたコアCPIが前年同月比では3.0%を下回るような内容になればマーケットは好感するかもしれないが、連邦準備制度(FRB)は、トランプ政権の政策が経済に及ぼす影響を見極めているため、今回の会合では政策金利は据え置かれるだろう。


毎日のようにマーケットに影響を与えるようなニュースが出てくるだけに、当面の間グローバルマーケットは、ボラタイルな展開が続くだろう。

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