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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 あれから12年 グローバルマーケットウィークリー 3/10/2023

アメリカの2月の非農業部門就業者数は前月比31万1000人増と、エコノミスト予想を大幅に上回る内容。失業率は3.4%から3.6%に上昇したが、労働参加率が62.5%に上昇したことが主因であり、アメリカの労働市場は健全だ。


しかしながら、金曜日の市場は、シリコンバレーバンク(SVB)のニュース一色となった。米テクノロジー企業への融資で知られ、米西海岸シリコンバレーのエコシステムの中核を担ってきたSVBが10日、経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入った。昨年末時点ではその他有価証券約USD 26bn、満期保有で約USD 91bn保有していたSVB。その他有価証券は略すべて売却し、3/8付で税引後約USD1.8bnの損失を計上していた。


この問題は、08年のリーマンショックの記憶を呼び起こすものだ。市場がこのSVBの問題が金融セクター全体に波及しかねないと懸念するのは当然であり、FRBはこの問題に収拾がつくと確信するまでは利上げに慎重になることは間違いないだろう。


SVBがFDICの管理下に入った今、預金が全額払い戻されるかどうかがポイントになるだろう。これが実現される限り、システミックリスクの原因にはならないものと思料される。


市場では、質への逃避の動きからグローバルに国債金利が低下している。来週はCPIなど重要な経済指標が発表される予定だが、システミックリスクの原因にはならないと市場が確信するまでは、市場はSVB並びに他の金融機関に関する報道に注目せざるをえないだろう。


日本では、東日本大震災から12年の年月が流れた。トレーディングフロアのテレビで観た津波の映像は今でも忘れられない。テロと地震とは全く別物だが、911テロを経験した私にとっては、災害という意味では同じで、正直怖かった。東京も大きく揺れ公共の交通機関が略全て止まり、当日は2人の同僚を車で送りながら自宅へ帰ったが、都内は大渋滞だったと記憶している。


私にとって、911テロは思い出したくなくても忘れられない出来事だ。同様に忘れたくても東日本大震災のことを忘れられない人も沢山いる。後世に伝えるのが生き残った自分達の責任だと考え、行動している人も多いだろう。素晴らしいことだと思う。今日はテレビの前でそんなことを考える一日にしたい。


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