篠原金融塾 相互関税 FRBは動けない グローバルマーケットウィークリー 4/4/2025
- 篠原竜一
- 2 日前
- 読了時間: 6分
トランプ大統領は、「患者(アメリカ)は重病だった。手術は完了した。」と強気な姿勢を崩していない。全米自動車労働組合(UAW)は「関税は雇用を米国に呼び戻し、米国の労働者に投資することにつながる」と歓迎しているものの、2日に相互関税が発表されてから、世界同時株安に歯止めがかからない。
ダウ工業株30種平均は、3日に1,679売られたが、トランプ政権の相互関税に対し、中国が報復関税で対抗、米国からの全輸入品に34%の追加関税を課すと発表したことを受け、4日のダウ工業株30種平均は、前日比2,231(5.5%)安の38,314で引けた。1日の下げ幅として史上3番目の大きさ、大暴落だ。
今後、中国以外の国・地域からも米国に対する対抗措置が出てくる可能性が高いだろう。報復を実施する国も、その結果輸入物価を押し上げることになり、貿易戦争に勝者はいない。世界的に生産性は低下する。
全米製造業協会は、「新たな関税のコストは投資や雇用、サプライチェーンに打撃を与え、製造業の超大国である米国の立場を脅かす」と非難。全米民生技術協会も、「相互関税は米国人への大規模な増税であり、インフレを加速させ、雇用を奪い、米国の景気後退を引き起こす可能性がある」と懸念を示している。
世界的な株安は始まったばかりとしか言いようがない。
4日発表のアメリカの3月の雇用統計では市場予想を上回る内容だったが、さすがにこれには反応できなかった。米政府効率化省(DOGE)による政府部門の大幅リストラなどで雇用情勢の軟化が今後想定されるからだ。
トランプ大統領は、「パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が金利を引き下げる絶好のタイミングだ。彼はいつも『遅れる』が、今ならそのイメージを速やかに変えることができるだろう。インフレ率は低下し、雇用は増えている。金利を下げろ。そして、政治的振る舞いはやめろ!」とプレッシャーをかけている。
一方、パウエル議長は、今週発表された関税率が予想より高かったため、米国経済は数週間前に予測されていた以上に物価が上昇し、成長ペースが鈍化する期間に直面する可能性が高いとの見方を明らかにした。
質への逃避の動きから米国債が買われているが、高インフレと成長鈍化の両面でリスクが高まっている時の金融政策のかじ取りは非常に難しいということは頭に入れておいたほうが良い。
中央銀行は、インフレ動向を無視できない。関税政策による一時的な物価上昇が持続的なインフレ問題にならないようにするため、利下げを実施するのは、労働市場に明らかに弱さが示されたり、消費が冷え込んだりしてからとなる。その時のインフレ率が想定していたよりも1%程度高い場合、金融政策はさらに後手に回らざるを得ない。
従って、FRBが関税のもたらす景気低迷を未然に防ぐことは難しいだろう。インフレ率がFRBが想定していたよりも1%程度高くなるとの見方が多い中、金融政策は後手に回らざるを得ない。FRBは景気の悪化には対応するが、景気が悪化しないように対策を講じることはできない。
パウエル議長は、不確実性は高いままだが、関税の引き上げ幅が予想よりかなり大きいことから、物価上昇と成長減速による経済への影響も予想より大きくなりそうだと述べている。
市場はトランプ政権が各国と交渉のテーブルにつき、何らかの解決を期待しているだろうが、絶対に自分の非を認めない人が絶対的な自信をもって発表した政策だけに簡単ではないだろう。
日本からは、東京大学に70年ぶりとなる新しい学部が再来年9月に新たな教育課程として、「UTokyo College of Design」という名前の学部を東京 文京区のキャンパスに設置するという素晴らしいニュースが飛び込んできた。
学部から大学院修士まで5年間で一貫して学ぶ様々な社会課題に取り組む人材を育成することを目的とする新しい教育課程で、授業はすべて英語で行い、国内外から優秀な学生を集めて国際的な競争力を高めていく方針とのことだ。定員100人のうち半数は海外の留学生を想定しているという。最大で1年間、企業でのインターンシップや留学など学外の学びも課すことにしている。
学生の選抜は現在の筆記試験とは別の形の試験を行い、9月の秋入学を導入する。東京大学では、2049年までに外国人学生の比率を学部で3割、大学院で4割以上に引き上げる目標を示していて、国内外から優秀な学生を集めて国際的な競争力を高めていく方針だ。人口減少を伴う少子高齢化が加速する日本。一人でも多くのグローバルリーダーを育ててほしい。
アメリカでは、クリントン政権で財務長官を務め、ハーバード大学学長などを歴任したサマーズ氏は、トランプ氏が発表した大規模な関税引き上げについて「これほど分析に基づかない危険で有害な経済政策を打ち出したとしたら、いかなる政権であれ、私は抗議して辞任していただろう」と表明した。「たとえ保護主義的な経済政策に信頼を寄せる人がいたとしても、トランプ大統領の関税政策は、ほとんど意味をなさない」とし、保護主義の体裁すらなしていないと断じている。
また、ノーベル経済学賞を受賞した著名な経済学者ポール・クルーグマン氏は、トランプ米大統領が発表した相互関税を「「関税率が誰もが予想していたよりも高いだけでなく、貿易相手国について虚偽の主張をしている」と批判した。
東京大学学長は、「人類社会が直面する課題には1つの学問領域では解決できない。世界中から学生に来てもらい、学びに対する新しいニーズにしっかりと応えていきたい」と話しており、素晴らしい取り組みだと思う。再来年の9月ということは、東京大学の新しい学部での最初のテーマは相互関税かもしれない。

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