篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 4/30/2021
アメリカでは、ワクチン接種率の高まり、事業活動制限の緩和、追加景気刺激策を受けた消費拡大などにより、経済成長はここ数カ月で勢いを増している。コンファレンスボードが27日発表した4月の消費者信頼感指数は14カ月ぶりの高水準。米商務省が29日に発表した第1四半期のGDPが年率換算で前期比6.4%増加、景気回復が続いている。現実的ではないが、このペースでの景気拡大が続けばアメリカのGDPは今後約11年で約2倍に拡大する。とにかく強い。アメリカではワクチン接種した人が毎週数百万人ずつ増えており、エコノミスト予想によると、第2四半期のGDP成長率は更に加速し、年率換算8.3%とみられている。これが実現すると、GDPは2019年第4四半期の水準を上回ることになる。
斯かる状況下、FRBはFOMC(4/27-28)で、政策金利をゼロ近辺に据え置くことを全会一致で決めた。利上げ実施は早くても2024年になるとの見通しで、引き続き、月間で少なくとも米国債800億ドルと住宅ローン担保証券400億ドルの購入を続ける。市場では、この米国債と住宅ローン担保証券の買い入れ額をいつ縮小するのか議論が始まっているが、オフィシャルにはFRBは検討さえしていない。今後のFRBにとって市場とどのように対話していくかが大きな課題となるだろう。
ポイントは、労働市場も景気回復に併せて急速に回復しているものの、引き続き米雇用者数はコロナ禍前を800万人程度下回っているということだろう。イエレン財務長官の専門は労働市場だ。パウエルFRB議長はイエレン財務長官を金融面から支え続けるはずであり、FRBが引き締めを急ぐ必要はないというのがメインシナリオであることは変わらない。
引き続き、財政面、金融面からサポートされるアメリカ経済の回復は続くだろう。金利が少しずつ上がり始めること自体は悪いことではない。米国債金利が一日で10bp急上昇するようなことさえなければ、金融市場は、定期的に調整しながらも、過剰流動性によりサポートされる展開が続く。
アメリカと比較すると、ワクチン接種が2-3か月遅れた日本。アメリカ、ヨーロッパ各国、カナダ、イスラエルで承認を取得しているモデルナ製のワクチンがいよいよ日本でも承認されそうだが、承認されればワクチン接種は加速するはずだ。ということはアメリカと比較すると2-3か月、半年の遅れで景気が盛り上がってきても不思議ではないが、ゴールデンウィークに緊急事態宣言を発出せざるを得ない状況なのが残念だ。分科会では、ゴールデンウィーク期間中の人流を抑え込、緊急事態宣言明け(5/11)の東京都の感染者数を500人程度に減らしたいと考えているようだが、その程度の抑え込みで宣言を解除してしまうと7月に向けて、1,500-2,000人に増えてしまうというシミュレーションもあるという。今やオリンピックを開催するのも中止するのも一大事になってしまっている。株式市場では、日本に対する期待感がなかなか盛り上がらず、日本株は米株に大幅にアンダーパフォームしている。
成長戦略がないと言われる日本だが、良いニュースもある。新型コロナウイルスの国産ワクチンについて、河野担当相は、早ければ年内にも承認される可能性があると明らかにした。ワクチン接種が進み、事業活動が再開されることに加え、国産ワクチンが開発されれば、アメリカに一年遅れて力強い景気回復が実現する可能性があるのではないだろうか?
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