篠原金融塾 ロシア国債、異例の「不履行」認定問題 グローバルマーケットウィークリー 6/3/2022
アメリカのインフレは、個人消費支出(PCE)価格指数によると、4月の消費者物価の上昇率は前年同月比6.3%と、3月の6.6%からは鈍化しているものの、とても安心できる水準ではない。コアPCE価格指数の前年同月比上昇率も4.8%で、3月の同5.2%から下がってはいるが、FRBがターゲットとする2.0%を大幅に上回っている状況は変わっていない。
斯かる状況下、5月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比39万人増と、市場予想を
上回る結果に。失業率は3.6%と横這い。米経済の減速を懸念する声が多かったが、雇用統計を見る限り、アメリカ経済のリセッション入りを心配する必要はない。連邦準備制度理事会(FRB)による金融引締は続く。金利は行ったり来たりしながらも今後も金利上昇が続くと考えておいた方が良い。
マーケットでは、欧米国債が売られ、金利が上昇している。ドル円は再び130円台乗せを示現している。政府・日銀を含め、円安は日本経済にプラスであると考える識者が多い。と言うことは私が間違っているのかもしれないが、経済が成長せず、生産性も賃金も上昇しない国で自国通貨安・資源高に起因する物価上昇はマイナスとしか思えない。このまま輸入物価の上昇が続くと日本経済の先行きが心配だ。
あまり話題になっていないが、先週私が注目したのは、ロシア国債、異例の「不履行」認定問題だ。世界の大手金融機関でつくるクレジットデリバティブ決定委員会は1日、ロシア国債が「支払い不履行」になったとの判断を示した。一部のドル建て国債の利払いが実施されなかったと認定し、事実上のデフォルトになる見通しだ。
満期を迎えた国債に対して、ロシア側は米国の銀行にあるドルで元本と利息を払おうとしたが、米政府が認めず金融機関が手続きを拒んだのが理由とのことだ。その後、30日の猶予期間が切れる間際に結局ドルで返し、デフォルトが回避されたと思っていたが、これに対し一部の債券保有者が、当初の期日を過ぎた猶予中の利息およそ190万ドルが支払われておらず、デフォルトにあたるとして審査を求めた。決定委員会に参加した13社のうち12社がデフォルトにあたるに投票、「クロス・デフォルト条項」は発動されないとのことなので、全てのロシア国債がデフォルトになるわけではないが、委員会は支払い不履行のクレジットイベントが発生したと判断した。対象となるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は、25億ドルほどあるといわれているが、規模は小さく、大手の機関投資家の殆どロシア関連の引き当て計上を3末に実施していることから、マーケットに与える影響は小さいだろう。
そうは言っても、今後ロシアは海外で資金を調達できない状況が続くわけで、その影響は小さくなく、他の国債でもクレジットイベントが発生する可能性もある。想定外のことが起こる可能性がないか引き続き注意深く動向を見守る必要があるだろう。
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