篠原金融塾 金融政策の正常化が始まる グローバルマーケットウィークリー 6/18/2021
金融政策の正常化が始まる!
FOMCメンバーによる経済見通しによると、1)2021年10-12月期のインフレ率は、前年比+3.4%(3月時点では+2.4%)に上方修正、2)2021年の経済成長率の予想は6.5%から7%に引き上げられた。また、3月時点の見通しでは、2023年を通して政策金利を据え置くと予想していたが、今回公表された政策金利予測の中央値によると、FOMCメンバーは23年末までに政策金利がゼロ近辺から0.6%に引き上げられると予想を変更。
パウエル議長はFOMC後の記者会見で、FRBの大規模な債券購入プログラムの最終的なテーパリング(量的緩和の段階的縮小)についても議論したことを明らかにした。
先週末には、セントルイス地区連銀のブラード総裁が、新型コロナウイルス禍からの回復に伴い、経済成長、特にインフレ率が予想よりも伸びていることに対する「自然な」対応であるという認識を示し、インフレ抑制に向け利上げを「22年終盤に開始すべき」と主張したこともあり、米株も値を崩している。
今後は今まで以上に米国債の動向に注目する必要がある。先週は、米国2年債10bp, 3年債16bp, 5年債13bp金利が上昇する一方、10年債は略変わらず、30年債は13bp金利が低下、イールドカーブは大幅にフラットニングしている。引き続き実質金利は大幅なマイナス圏にあり、十分に低いことは事実だが、先週1週間で、実質金利は5年で21bp、10年で10bp上昇する一方、30年は4bp低下している。今後も実質金利が上昇を続ければ、株価の上値を抑える要因になる。
また、市場が利上げを予想し、実際に利上げを始めるまでが、社債、モーゲージ債などのスプレッドプロダクトにとって一番苦しい時期が来る。ポートフォリオマネージャーにとっては、大変な相場の到来かもしれない。イールドカーブがフラットニングし、キャリー収益が期待できない状況下、ボラテリィティを買ってヘッジするしかないが、そうするとキャリー収益がますますなくなってしまう。2年、5年のswap金利のターゲットを決めて、Payers optionを売ることにより、キャリー収益を捕捉するという選択肢もあるが、金利が上昇すると共にロングポジションが増えていく勇気のいる戦略だ。
繰り返し述べてきたが、本格的な利上げ相場を経験しているトレーダーは既に引退してしまっている。利下げ相場で損をすると言っても余程下手なオペレーションをしない限り、大きな損をすることはない。一方利上げ相場は、何でこんなに損しているのって思うくらい大きな損失を被ってしまうことがある。FF金利が0.6%まで上がるということは、その時の3か月の金利は0.8%、2年債の金利は1%を上回るだろう。2年債金利の水準が今のレベルから75-100bp上昇してもおかしくないが、そういうベアマーケットを知っている市場参加者が少ない。いよいよ、おじさんトレーダーの出番かもしれない。
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