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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 グローバルマーケット(週次)

米ドルが弱い。

米ドルは、Flight to quality(質への逃避)の動きが起こると買われる通貨だと言われてきた。実際に、新型コロナの感染拡大で市場が大混乱した3月には投資家が米ドルなどの安全資産に資金を逃避させ、米ドルは堅調に推移した。

4月末以降の経済再開に伴い、市場が落ち着きを取り戻し、リスクオンの展開となると、米ドルに逃避された資金の巻き戻しの動きを受け、米ドル安の展開となった。

しかしながら、足許気になる動きが出てきている。

米国では9日には新たに約6万人の新規感染者が確認された。これは過去最多だ。この新型コロナ対応のまずさに加え、トランプ政権の人種差別抗議デモへの対応にも批判が集まっていることもドル安要因となっているようだ。

今のところはNASDAQが史上最高値を更新するなど株式市場は堅調であり、リスクオンの動きからドル安と説明する向きが多いが、新規感染者の急増が続くと、結果として経済活動に影響が出る可能性があり、この状況が続くと欧州へ資金が流れてもおかしくない状況だ。再びリスクオフの展開となれば、3月のように投資家は株を利喰い、キャッシュ比率を高めるが、ドルが選好されないリスクも出てきているような気がする。

先週は5週間ぶりに日本の投資家も外債を売り越している。日本の投資家が米国債を購入すれば、当然ドル調達ニーズは高まる。3月の市場混乱時に米ドル調達需要が高まり上乗せ金利を払わないと調達が難しい状況になっていたが、足許は落ち着いてきた。

米国債を購入、円投ドル転を実施することにより米ドル調達を行うリアルマネー投資家の動向はドル円の動向に影響を与える。外債を買い越せばドル高、売り越せばドル安である。しかしながら、邦銀による米国債投資では、主要な調達手段はレポ取引だ。購入した米国債を担保に米ドルを調達する。資産サイドも負債サイドも米ドルなので、為替取引は発生しない。従って、ドル円のレベルには直接は影響しない。

ここからの相場の展開は難しいが、変わらないのは、過剰流動性の存在だ。金融市場には行き場を探している資金がジャブジャブだ。リスクオンで株式市場が堅調に推移する展開では、買いが買いを生む。逆にリスクオフの展開となりグローバルに株価が下落する展開では、資金が集中するのは米国債だろう。米国での新規感染者の急増が続くと、結果として経済活動に影響が出る可能性があり、今週の国債市場ではイールドカーブのフラットニングが進んでいる。

その調達コストを考えると米10年債の0.64%は魅力的ではないが、日米欧の中央銀行による異次元緩和により、金利は大きく上がらない。投資家にとっては、ますます運用難の状況となっている。

経済再開を受けて上値を試している株式・社債へのエクスポージャーを減らしにくい状況では、そのヘッジとして相応の国債のポジションを保有する必要があり、当面米国債金利が大きく上昇することは考えにくい。


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