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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 FRB, ECB vs 日銀 グローバルマーケットウィークリー 7/22/2022

欧州中央銀行(ECB)当局者は、7月の利上げ幅は0.25%になる可能性が高いと示唆していたが、実際には主要政策金利を0.50%引き上げてマイナス金利を解消、0.00%とした。さらに、加盟国間で金利差が開きすぎないように債券を購入する「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」プログラムを新たに立ち上げたと公表した。


来週の最大のイベントは26-27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。市場では予想を上回る雇用統計を受け、一時1%の大幅利上げを織込みにいく展開となったが、足許、0.75%の利上げが市場のコンセンサスとなっている。従って、0.75%の利上げであれば市場に与える影響は限定的だろう。


また、市場ではアメリカのリセッションリスクが高まってきたと見る向きが増えている。米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが行き過ぎ、景気低迷を招くという見方だ。ドル円は136円台前半まで売られ、3%台に乗せていた米10年国債は、2.75%迄買われての越週となっている。


来週のマーケットはFOMCの結果次第だが、仮にアメリカのリセッションリスクが高まっているとしても、FRBの足許の最優先課題はインフレを抑えることであり、アメリカの利上げは続くということは忘れてはいけないだろう。


このようにFRB、ECBによる金融引締が強化される中、日銀は異次元の金融緩和政策を維持している。グローバル化が進んだ世界でここまで金融政策の方向性が異なる事による歪みは思っている以上に大きいはずだ。しかも、単なる金融政策の方向性が異なるという話ではない。FRB、ECBが金融政策の正常化を進める中、日銀は「異次元」の金融緩和を継続しているのだ。


金融政策を引き締めれば、景気は減速する。


それでも、インフレは経済活動に対する課税するのと同義であり、仮にインフレを制御できなければ、先行きの経済が非常に悪い状態になる可能性があると考えるFRBとECB。


一方、日銀は需要不足の解消こそが日本経済にとって最大の課題であり、それに対応するためには異次元の金融緩和政策の維持が必要だとの認識からインフレを放置している。足許、日本の輸入物価は、前年比約45%も上昇している状況だが、これを放置していて本当に良いのだろうか?


今年の1月から6月までの上半期の貿易統計は、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が7兆9,000億円あまりの赤字と半年間では過去最大の赤字額となった。第1の要因は、資源価格や食料価格の高騰だ。特に原油や石炭、天然ガスなどエネルギー関連の品目の価格が大幅に値上がりし、輸入額が大きく膨らんだことだ。そして、第2の要因は、円安が進んだことにより、円ベースの輸入額が押し上げられたことだ。ということは、投機筋のみならず実需も円売り要因となっているということだ。


FRB, ECB vs日銀、どちらが正解なのかという単純な問題ではない。しかしながら、いつから始まったかわからなくなってしまうほど長い間金融緩和を続けても賃金上昇を伴う経済成長を実現出来ない日本は本当にこのまま異次元の金融政策を継続していて良いのでしょうか?金融政策で解決出来ないもっと本質的な問題があるはずであり、金融政策に頼りすぎていることによる副作用が心配だ。


日本が毎年産み出す付加価値は約540兆円。この30年間の増加額はわずかだ。エコノミストは、それは需要不足だからだと言うが、供給サイドに魅力的な物がないからではないでしょうか?日本の家計が保有する金融資産は約2,000兆円。このお金を動かすような付加価値、魅力的なものを産み出す事が出来ない事が最大の問題だと私は思う。




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