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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 09/29/2023

欧州連合(EU)統計局が29日に発表した9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年同月比4.3%と、8月の5.2%から低下、食品・エネルギー・アルコール・たばこを除くインフレ率は5.3%から4.5%に低下した。良い兆候だ。


米商務省が29日に発表した8月の個人消費支出(PCE)価格指数は、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数の伸びが前年同月比3.9%と、前月の4.3%から減速した。基調的なインフレ圧力の軽減が示されたことで、米連邦準備理事会(FRB)が次回10/31-11/1の会合でも政策金利を据え置く可能性がでてきた。


欧米ともに景気後退が差し迫っていることを示唆するような経済指標はでてきていないが、エネルギー価格と借入コストの上昇のほか、所得の伸びの鈍化などの消費に対する圧迫要因が増大する中、リスクは間違いなく高まっているという見方が増えてくるかもしれない。


この見方が正しいとすれば、日銀による金融政策の「正常化」には時間的猶予が少ないはずだが、多くの政策決定会合の委員が賃金上昇を伴う形で2%物価目標の実現を見通せる状況にはまだ至っておらず、粘り強く金融緩和を続ける必要があると考えている。従ってマイナス金利政策の修正にはなお大きな距離があると考えているもの委員が多いものと思われ、為替は、欧米の金利が上昇すれば円安・逆に低下すれば円高という海外の中央銀行の金融政策に大きく反応する展開が続くだろう。


市場が注目していた米政府機関の閉鎖については土壇場で回避された。週明けの金融市場はどうなることかと思っていたが、一旦はこの混乱は落ち着くだろう。しかしながら、今回の合意は、45日間の予算執行を認める内容にすぎないことには留意を要しよう。


読者から「日銀が為替を念頭において金融政策をやるでしょうか?金融政策はあくまでもデフレ脱却にこだわるべきではないでしょうか?」というご意見を頂戴した。大多数はそう考えているだろうし、もっともな意見だ。


中央銀行は、株価・住宅価格の変動が、生産・インフレに深刻な影響を与えるという明確かつ説得力のある証拠がない限り、その変動は無視すべきであるとベン・バーナンキ元FRB議長も主張している。たしかに、金融政策の目的は物価の安定を通じて、安定した経済成長をもたらすことであるため、通常時の金融政策において株価・住宅価格は、直接の対象とはされないと考えられている。


しかしながら、株価・住宅価格の変動が直接的・間接的に影響を及ぼす場合、結果的に株価・住宅価格の動向が金融政策の行方を左右することもあるのではないでしょうか?


為替の動向も同じだと私は思う。2年前のドル円は111円。現在は149円。これだけの自国通貨安を招いた主因は金融政策だ。この間物価は大幅に上昇しているが、特に輸入物価を大きく押し上げた要因は円安だ。そもそもゼロ金利政策、YCC政策というのは緊急時の政策であり、為替の激しい変動が金融政策の行方を左右することもあるのは当然ではないでしょうか?


その緊急時の政策の本格的な修正に着手できない日本。欧米ともに緊急時の政策の修正はほぼ完了、利上げの最終局面にある。来年は利下げに転じると予想するエコノミストも少なくない。私が申し上げていることは多数派ではないだろうし、間違っているのかもしれない。しかしながら、斯かる状況下、日本だけが異次元の金融緩和から脱却出来ずにいることが我が国にとって良いことだとはどうしても思えない。



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