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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 9/8/2023

この1か月のマーケットを振り返ってみると、アメリカの景気がエコノミストたちの予想よりも底堅いということが言えるかもしれない。


パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での講演で、「これまで実施した利上げでは景気を十分に減速させることはできていない」とした上で、当面は政策金利を据え置く姿勢を示した。同時に、米経済が力強く持続的な成長を続ける中、「今後のインフレ抑制には追加利上げが必要となる可能性がある」との認識も示した。


前回7月の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げを決定、現在のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.25~5.50%。次回会合は9月19・20日に開催される。8月の雇用統計によると、失業率は3.8%と7月の3.5%から上昇しているが、労働参加率の上昇が主な要因であり、就業者数は過去12カ月で310万人増加しており、労働市場は健全だ。


パウエル議長は「持続的にトレンドを上回る経済成長を示す新たな証拠が確認されれば、インフレ対応の更なる進展はリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性がある」とコメントしており、仮に9月のFOMCでFF金利が据え置かれたとしても、その後の利上げの可能性を払しょくすることができない状況であり、アメリカの金利が上昇している。

WSJ紙によれば、アメリカ経済が堅調な要因は三つある。一つ目は、労働力人口の増加と物価の伸び鈍化が米国人の「実質」所得を押し上げ、雇用と消費を促していること。二つ目は、コロナ禍という異常事態が消費パターンをゆがめ、商品・住宅・労働者不足を招き、結果として膨大な繰り越し需要が生まれたこと。三つ目は、政府が当初、経済に多額の現金をばらまき、金利を超低水準で維持したこと。


堅調な経済活動が未来永劫続くことはないだろうが、当面のアメリカ経済が世界経済の足を引っ張ることはなさそうだ。


金融政策については、いずれにせよ最終局面が近づいてきた。しかしながら、市場では、利上げ出尽くし感を醸成できずにいるので、債券市場に資金は流れ込んでいない。FRBが更なる利上げを実施するようであれば米10年国債金利が4%を大幅に下回るような展開は考えにくい。むしろ更なる金利上昇の可能性の方が高いかもしれない。


そんな中、日本銀行の植田総裁は、読売新聞の単独インタビューに応じている。


植田総裁は、短期金利をマイナス0.1%とするマイナス金利政策の解除のタイミングについて、「マイナス金利の解除後も物価目標の達成が可能と判断すれば、(解除を)やる」と述べている。具体的な時期は、現状では「到底決め打ちできる段階ではない」としたが、来春の賃上げ動向を含め、「年末までに十分な情報やデータがそろう可能性はゼロではない」と述べている。


いよいよ日銀がYCCの修正に加えて、年内にもマイナス金利を解除する可能性がでてきた。年末に向けては、日米欧の金融政策の行方にグローバルマーケットは右往左往するボラタイルな展開となるのかもしれない。





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