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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 09/11/2020

ユーロが強い。ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を1兆3,500億ユーロ(約170兆円)で維持し、中銀預金金利をマイナス0.5%で据え置くことを決定。追加緩和に向けた何らかのシグナルを期待していた市場の期待は裏切られる形となった。

ラガルド総裁は記者会見で、ユーロの為替レートは物価への影響に鑑み監視する必要があると述べたが、同時にECBは特定の為替水準を目標にすることはしないと強調した。

ECBが特定の為替水準を意識していないわけはないだろう。

ラガルド総裁の話を聞く限り、中期的なインフレ動向を注視するECBは、1.18ドル台で推移している間はECBとして特に何かを検討するつもりはなさそうだが、1.19-1.20ドル台になってくると話は変わってくるのでは?

アメリカでは、上院が新型コロナウイルス感染拡大を受けた3,000億ドル(約32兆円)規模の追加経済対策法案の採決に向けた動議を否決。与党・共和党が与野党合意を待たず採決を目指したため、民主党が反発。与野党合意は先送りされた形だ。

市場が注目していた米国債の入札は、3年債入札は今一つ盛り上がりに欠ける展開となったが、10年債入札はまずまず、そして30年債入札は、最高落札利回りが1.473%と入札は好調な結果となった。大統領選が近づく中、財政面で米経済の足を引っ張る可能性もある。高値を試している株の調整を意識、近く追加策が策定されなければ、国債増発を巡る懸念の後退につながるため、長期債に買いが入った模様。この結果を受け、米国債利回りが低下。イールドカーブはフラットニング。

株式市場はちょっと一休みだ。大統領選を控え、米議会での共和党・民主党間の妥協案がまとまるのには時間がかかりそうになってきた。米株が史上最高値をとりにいく展開とならなければ、日経平均が24,000円台を試すのは苦しいのでは?

それでも株式市場についてはそれほど心配する必要もない様な気がしている。

先進国の名目金利は、現状ほぼゼロと言う状況だ。従って、金融政策で出来ることは殆どない。そうは言っても、先進国の財政赤字は大幅に拡大し、財政政策で出来ることも限られてきている。


日米欧の政策当局者は、市場の混乱だけは決して見たくない状況だ。何かあれば、量的緩和を実施する以外に金融政策の強化は難しい。量的緩和の方法は金融資産を中央銀行が買うということだ。市場に流動性を供給し、ますます過剰流動性が市場を支配する。

金融政策によって、資産を持っているものがより市場の上昇で豊かになり、格差が更に拡大するか、若しくは資産を持っているものが市場の下落で損失を被る一方、資産を持っていない中間層・貧困層は損失を免れるが、不景気になることにより、生活が更に苦しくなるか、選択肢は2つだ。

政策当局者は、3月の相場は2度と見たくないはずだ。従って、どちらかを選択するとすれば、政策当局者は批判を浴びることはわかっていても、前者を選択するだろう。

何かあれば中央銀行が助けてくれる。本当にそれで良いのかと聞かれれば全然良くはない。このつけは必ず払わされる時が来るはずだ。でも、それは今ではない。

もしそれが今だとすれば世界大恐慌に備える必要があるが、そんな勇気のある政策当局者はいない。

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