篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 9/30/2022
2022年度上半期が終わった。
この半年で米国債金利は大きく上昇、米株が頭を押さえられたことを受け、グローバルに株式市場が軟調な展開となった。金融政策を反映し、ドルは堅調推移、グローバルに景気減速懸念から原油、金が値を崩した。グローバル化の進展で世の中が効率的になり、多くの市場参加者が、過去のようにインフレに苦しむことはないのではないかと考えてきたが、その考えを改めないといけないような相場展開だ。新型コロナ、ロシアによるウクライナ侵攻でグローバル化の反転の動きが非効率的な世の中へと後戻りさせられている状況だ。債券市場と株式市場が同時にこれほど売られたマーケットは初めてだ。
1992年のERMの崩壊時には、米独英の金融政策の方向性の違いから英ポンドが暴落したが、足許では、イギリス市場が大混乱だ。政府が先週23日に大幅減税政策を発表してからの数日間、ポンド相場は急落し、英国の資産価格も大きく下落した。英イングランド銀行(BOE)は、金融引き締めとインフレ抑制のため、保有国債の売却を10月3日から開始する予定だったが、28日、市場の安定化に向けて長期国債を緊急で買い入れると発表せざるを得ない展開に追い込まれた。BOEにとって、これはあまりにも想定外の展開だ。売却計画は10月31日に延期されたがどうなるかはわからない。
国債金利を比べてみよう。
昨年末に1.51%だったアメリカの10年国債は、3末には2.33%、そして9末には3.83%と約230bp金利は上昇。更に、昨年末に3.30%だったアメリカの住宅ローン金利は、3末には4.80%、そして9末6.80%と約350bpも金利は上昇。モーゲージ債投資家にとっては、非常に厳しい投資環境だ。また、昨年末に-0.18%だったドイツの10年国債は、3末には0.55%、そして9末には2.12%と米国債同様約230bp上昇。
そんな中、昨年末に0.07%だった日本の10年国債は、3末には0.22%に金利は上昇したものの、9末には0.24%とこの半年ほとんど変わらずの状況だ。世界の中央銀行がインフレに対応するため、量的緩和を終了し、金融引締に動く中、日本銀行が金融緩和(国債買入れ)を強化しているからだ。しかしながら、日本の国内企業物価指数は、前年比で9.0%上昇している。輸入物価指数は前年比42.5%も上昇している。
日本銀行ホームページより抜粋
日本だけがインフレを心配しなくて良い状況ではないのにもかかわらず、日銀は金融緩和政策を維持している。インフレ率が今後も上昇するように後押しをしているような政策を継続している。大きなインフレ要因である円安を阻止すべく、財務省による円買い介入が実施されたが、ちぐはぐな政策としか言いようがない。
日本は引き続き流動性を供給し、需要政策を実施しているが、先進各国がやっていることは正反対の政策だ。当面は145円台に乗せると財務省による介入が入ってくるという観測から一気に150円台乗せということにはならないものと思料される。介入資金に限界があると言われているが日本の外貨準備は潤沢にあり、大きな心配はないが、後がない。日銀が国債購入を続け、金利の上昇を防ぎ、財務省が介入により円を買い支えているようでは先行きが心配だ。
投資家にとってみると、白旗を上げたくなる相場展開だが、これだけ明らかに日米の金融政策の方向性が反対であったことから、ドルを買うことはそんなに難しいことではなかったはずだ。しかしながら、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治を進める中、リスク資産で運用することは難しかった。日本の機関投資家にとっては非常に厳しい投資環境だったものと思料される。残念ながら、当面この環境が変わるとは思えない。引き続きマネーマーケットファンドに退避しておくという戦略しかないのではないか?
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