篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 10/9/2020
今回の大統領選挙はトランプ米大統領が勝つか負けるかという選挙だ。大統領選の結果がどうなるかはわからないが、何はともあれ、先週は世界中がトランプ米大統領に注目した週となった。
株が買われ、米国債は売られ、イールドカーブはベアスティープ。欧州債市場では、新型コロナ感染拡大が止まらないことを受け、金利は低下。アメリカの新型コロナウイルス経済対策への期待が再び高まり、他の市場ではセンチメントが改善したが、欧州債市場の投資家は依然として慎重な姿勢を保っている。
結果だけ見れば、トランプ米大統領は驚異的に元気な74歳だ。新型コロナに感染したにもかかわらず、わずか3日で退院。それも既に働いている。普通の風邪をひいたって3-4日で回復する人はそうはいないのに。週末には支持者を集めてホワイトハウスで集会。やりたい放題だ。いつもの大統領選以上に不確実性は高い。
トランプ氏は退院するやいなや、民主党との新型コロナウイルス経済政策協議を11月の大統領選後まで停止すると表明した。それも直前にパウエルFRB議長が、新型コロナウイルスの流行を背景に苦戦を強いられている個人・企業に議会とホワイトハウスが追加支援を提供しない場合、悲惨な経済的結果につながる恐れがあると警戒感を示したにもかかわらずだ。
しかしながら、トランプ大統領は8日になって、コロナ経済対策を巡る議会との協議が再開し、合意に達する可能性は十分あるとの認識を示し、9日になって、追加の新型コロナウイルス経済対策を巡り、民主、共和いずれの党の提案よりも大規模な支援パッケージになることを望んでいると述べた。
従来、リベラルな民主党が政権をとると株式市場は売られ、保守的な共和党が勝利すると株式市場は買われると言われているが、今や財政政策・金融政策に関しては大きな差はない。バイデン氏が勝利すれば、一段の財政刺激策と選挙後様々な分野での分断が解消され、政治経済が安定化するとのシナリオから株式市場も大きく売られることはないのかもしれない。
株式市場にとって大事なことは、選挙の透明性が維持され、次の大統領がスムーズに決まることだろう。どちらが大統領になっても、株価は、年内更に上値を試すことになるのではないか?逆に、どちらが負けても、敗北宣言を行わないということになるようだと株式市場は動揺する。
アメリカの問題は2021年だろう。2021年という年の景気をどう考えるか?
引き続き主人公はトランプ氏なのか?「俺に任せておけ、財政も金融もフル稼働だ!」と引き続き行けるところまでいこうということになるのか?だとするともう少しはしゃいでいて良いのかもしれない。明らかにやりすぎの財政・金融政策による過剰流動性が金融市場の歪みを更に酷いものにしていくが、リスク資産は支えられる。
それともバイデン氏による通常の政治に戻るのか? 明らかに様々な分野の分断による国力低下が甚だしいと嘆くバイデン氏とハリス氏がリードするアメリカ。社会は安定し、大きく改善するだろう。中道寄りのバイデン氏だが、そうは言っても財政を考えると、増税は避けては通れないはずだ。行き過ぎたリスク資産の歪みは解消する。
それにしてもパウエルFRB議長のコメントが気になる。米経済は完全回復からはるかに遠く、新型コロナウイルス感染拡大が効果的に制御できず、成長が抑制されれば、下方スパイラルに陥る恐れがあると述べた。早期に財政政策が実現しなければ米経済はとんでもないことになるというのが、世界で最もリスペクトされているセントラルバンカーの言葉だ。ニューヨークでも一部で経済を停止しないといけない状況になっており、2021年のグローバル経済はバラ色ではないことは確実だ。
大統領選までは嵐の前の静けさ。レンジ内での動きが続くものと思料。年初は波乱の展開も頭に入れておいた方が良さそうだ。
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