篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 10/21/2022
グローバルマーケットは非常にボラタイルな展開が続いている。
イギリスでは、リズ・トラス英首相が20日、就任からわずか45日で辞任を表明。トラス氏が打ち出した拡張的な財政政策は、英ポンドの下落と英国債の急落を招いていた。
アメリカでは、11月1~2日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.75%の利上げが実施される見込みだが、その先の景気減速懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが鈍化するのではないかという見方もでてきている。しかしながら、FRBが19日公表した米地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、一部の企業からは労働市場の引き締まりを背景に、人材確保のためには賃金引き上げが不可欠で、賃金上昇が続くとの見通しが示されており、12月のFOMCでも0.75%の利上げが実施されると考えておいた方が良いのではないか?たしかに、ベージュブックでは、高いインフレ率と金利上昇により、先行きの需要の鈍化に対する懸念が広まっていることが示されていることも事実だが、FRBの最優先課題はインフレの沈静化だ。年末のFF金利の誘導目標は、4.50~4.75%に引き上げられる可能性が高く、アメリカの国債金利はまだまだ上がると考えておいた方が良い。
一方日本では、10年物国債利回りを0.25%以下に抑える日銀の長短金利操作(イールドカーブコントロール=YCC)政策を変更するつもりはないと黒田日銀総裁は言明しており、当面その政策が変更される可能性は小さい。
斯かる状況下、神田財務官は記者団に対して「介入の有無についてはコメントしかねる」と話しているが、21日のニューヨーク市場で財務省は、円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったようだ。円相場は152円台を試す展開となっていたが、わずか1時間ほどで7円程度売られる展開となり、144円台を示現したが、結局147円台後半での越週となった。
仮に日銀がYCCを撤廃、あるいは修正すれば、大量の資金が日本に還流する可能性があり、円は急騰すると言う向きが多い。今YCCを撤廃すれば、日本の長期金利は上昇を始め、短期的に円は大きく買い戻されると私も思うが、そんなに楽観的で良いのだろうか?
世界では強い需要を抑える必要があり、中央銀行が利上げを実施しているが、日本では引き続き需給ギャップが引き続きマイナスの状況であり、日銀はYCCを解除できない状況なのだ。仮に世界経済が減速したとしても、インフレが落ち着かない限り、世界各国との金利差は縮小しない。中長期的な円安はまだ始まったばかりかもしれない。
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