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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 エリザベス女王死去、そしてあれから21年 グローバルマーケットウィークリー 9/9/2022

イギリスに住み始めたころ、ラグビーの試合を見に行こうと同僚にパブに連れていかれたことがある。何だかいつもより混んでいた。大騒ぎだったパブが一瞬静かになった。試合前の国歌斉唱の時間だ。そして、イギリス国歌の大合唱が始まった。テレビ映像がなかったら、これがイギリス国歌だとはわからないほどの音痴だが、皆God save the Queenと絶叫している。でも何だかその姿にとても感動したのを覚えている。


God save our gracious Queen, Long live our noble Queen, God save the Queen:

Send her victorious, Happy and glorious, Long to reign over us; God save the Queen.


イギリス国民のみならず世界中から愛された英国君主であるエリザベス女王が亡くなった。私が生まれた時には既に女王だった。70年もの間世界中の人に親しまれた女王が亡くなられた悲しみは大きい。ご冥福をお祈りしたい。


そして、また9月11日がやってきた。


2001年9月11日の朝は、雲一つない快晴だった。8時46分、アメリカン航空11便が、私が働いていた世界貿易センター(WTC)のノースタワーに激突した。9時3分、ユナイテッド航空175便がサウスタワーに激突。ノースタワーの50階にいた私は、非常階段を使って逃げていたが、何が起きているか全くわからなかった。9時59分、サウスタワーが崩壊は近くの道路でその瞬間に立ち会った。本当に怖かった。10時28分、ノースタワーが崩壊した時にはブルックリンブリッジを歩いて渡り、北上していた私は見ていない。マンハッタンのミッドタウンにあるオフィスに戻ろうと橋の上を歩いている時にサウスタワーだけでなくノースタワーもなかったことがわかった時には言葉を失った。私は「あの頃と比べて、世界はより良いところになっているのだろうか?」と毎年自分に問いかけることにしている。新型コロナが世界の分断ではなく、世界が団結し、共に受け入れる世の中づくりのきっかけになって欲しいと思っている。


さて、グローバルマーケットは利上げラッシュだ。


オーストラリア準備銀行(RBA、中央銀行)は6日、政策金利を0.50ポイント引き上げ、2.35%とすることを決定した。カナダ銀行(BOC、中央銀行)は7日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を75ベーシスポイント(bp)引き上げ、3.25%とした。欧州中央銀行(ECB)は8日、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)は0.50%から1.25%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸出、翌日返済)は0.75%から1.50%、預金ファシリティー金利は0.00%から0.75%に引き上げた。ECBもFRBを追いかけ始めた。欧州債市場も本格的な金利上昇が始まりそうだ。


次回の連邦公開市場委員会(FOMC)を9月20~21日に控える中、市場では0.75bpの利上げを織込み始めた。こればかりは結果を見てみないと何とも言えない。先週の繰り返しになるが、9月のFOMCでの利上げ幅50 or 75bpで右往左往するのは得策ではない。最終的にFF金利の誘導目標は、2023年には3.5%を超える水準に引き上げられる可能性が高いと考えておくべきだろう。「景気鈍化に配慮してインフレ率が鈍化すれば金融引締を緩める」という期待をするのはまだ早すぎるとしか言いようがない。オーバーナイト金利が3.5%以上になるのであれば、米国債金利は4%程度まで上昇しても不思議ではない。


日本以外の国債金利はまだまだ上がりそうだ。グローバルにはインフレ退治が最優先課題なのだ。日銀が出来ることには限界があるのは確かだが、それでも頑なに金融緩和を維持していて良いのだろうか?日本の輸入物価指数(対前年比)は、+48%という状況だ。政府・日銀が円安への警戒を強めていないはずはない。9日、岸田文雄首相と黒田東彦日銀総裁が首相官邸で30分ほど懇談した。この報道を受け、円は買い戻される展開となったが、口先介入だけでは円安のトレンドは変わらないだろう。「日銀は自分たちの意思で金融緩和を続けている。それが円安の大きな主因だ。だったら日銀は金融緩和を止めれば良い」とFRBは主張するだろう。そもそも金融緩和と自国通貨高政策は矛盾しており、為替介入はナンセンスだ。さすがに世界の中央銀行とここまで金融政策の方向性が異なるとどこかに歪みが生じるのは仕方ない。ドル円は、このまま何もしなければ、150円、160円、180円、正直どこまで売られても仕方ない。


金融政策を転換出来ないのであれば、それ以外の大きな円安防止策は、国を開けることだろう。インバウンド需要が盛り上がることは間違いない。それも観光客による消費だけではない。日本への投資を検討している外国人投資家にとっては、円安は大きなチャンスだ。円高の時期と比べると5割引きで日本へ投資出来る。




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