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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 グローバルマーケットウィークリー 10/18/2024

10日間ほど欧州にいたが、その間にグローバルマーケットは大きく動いている。


4日に発表されたアメリカの9月の雇用統計が予想を大幅に上回る内容になったことが主因だろう。7月と8月の就業者数は上方修正され、9月の就業者数はさらに好調だった。加えて、10日に発表したアメリカの9月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で2.4%上昇、コア指数は前年同月比3.3%上昇している。また、17日に発表されたアメリカの9月の小売売上高も前月比0.4%増と、アメリカの個人消費は想定以上の強さを保っている。


繰り返しになるが、私は、前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利下げが実施されたものの、大幅な利下げが必要なほどアメリカ経済は低迷していないと思っている。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の見方も大きく異なるとは思えない。


インフレ率が、FRBの目標水準である2%に向けて下がってきているため、FRBが名目金利を押し下げなければ、実質金利が上昇することになる。従って、パウエル氏は、アメリカ経済が引き続き健全な状態にある中で、金融政策の微調整を行ったというのが私の理解であり、インフレと失業率のリスクがほぼ均衡しているもとでの0.50%の利下げは、FRBは後手に回らないという宣言なのだと思っている。


一方、欧州中央銀行(ECB)は17日に開いた理事会で、景気失速の懸念からインフレ鈍化が想定より強まる恐れがあり、政策金利を0.25%引き下げると決めた。今後の利下げペースは「データ次第」とのこと。


確かにドイツとフランスの減速は気になるが、私は景気減速とインフレ、どちらかと言えば、インフレが気になっている。


インフレは心配ないと決めつけて本当に良いのだろうか?


今後先進国は恒常的に労働者不足に陥るだろう。グローバリゼーションは、先進国にとって、低賃金労働者の雇用を容易にし、ディスインフレ的な世の中を産み出した。その巻き戻しの動きは明らかにインフレ的だ。


加えて、世界的なESGの動きは、E(環境)から始まったが、いよいよS(社会)、G(ガバナンス)の具体的な取組みが求められる時代になってきた。人権保護の国際基準である「国連ビジネスと人権に関する指導原則」などから考えると、脱炭素のカギを握る再エネの導入などを考えても、Eの分野のみならず、S, Gの観点も考慮しないといけない時代。これは、マクロ的に考えれば明らかにインフレ的である。


大きな流れとしては、ディスインフレの時代が終焉し、インフレの時代が始まったかもしれない。市場参加者の思惑が大きく変わり、グローバルマーケットが右往左往する展開が続きそうだ。


話は変わるが、わくわくするニュースが飛び込んできた。スペースXが月や火星への飛行も想定して開発している大型宇宙船の試験飛行が行われ、再利用を目指すロケットブースターを発射台に回収することに初めて成功した。ロケットブースターが海に落ちるのではなく、発射台に戻ってくるなんて!


宇宙船は、宇宙空間に到達したあと大気圏に突入し、打ち上げからおよそ1時間後、予定していた海上に着水したということだ。


まだまだ解決しなければならないことは沢山あるのだろうが、火星移住計画の実現に一歩近づいたことは間違いない。


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