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執筆者の写真篠原竜一 代表取締役社長

GUNMA KOKUSAI ACADEMY(GKA)

2019年8月に訪問


群馬県太田市にあるぐんま国際アカデミーの初等部のある西本町キャンパスと中高等部のある向ケ島キャンパスを訪問した。


ぐんま国際アカデミーは、太田市が小泉内閣当時の目玉事業である「構造改革特区」に最初に申請、その外国語教育特区構想が、構造改革の第一号として認定された小中高一貫教育を行う学校だ。2005に始まった。第一期生は小学1年生107名、小学4年生59名。2011年には国際バカロレア(IB)ワールドスクールに認定され、2012年にはIB ディプロマプログラム(IBDP)を開始している。


この学校の教育理念は、日々変化を遂げる国際社会の中でリーダーとして必要な能力と知識を備えた国際人の育成。日本人教員と外国人教員による英語イマージョンプログラムに基づいたカリキュラムを用い、生徒の能力を最大限に伸ばす教育を実践。日本人としてのアイデンティティーの確立や世界の多様な異文化を理解することにも力を注ぎ、世界のあらゆる分野で活躍できる人材の育成を目指している。


ぐんま国際アカデミーは、日本語を母語とする生徒に対し英語イマージョン教育を行う小中高一貫教育の学校である。編入の受入れも行っているが、入学するためには小学1年生で受験する必要がある。最近ではプリスクールで既に英語を学んでいる生徒もいるが、入学時の英語力は問わない。


まずは初等部の校長先生による説明から始まった。何といってもこの学校の特徴は英語イマージョン教育だ。イマージョン教育とはバイリンガル教育方法のひとつで、第二言語である英語で算数、理科、芸術などの一般教科を学ぶ。英語を学ぶことが目的ではなく、授業の目的はあくまでも算数、理科、芸術などの学習による知識・概念を習得することだ。こうした授業を通じて、生徒は母語を習得するように自然な形で英語を習得していく。イマージョンというのは、浸すという意味で、英語の環境に生徒を浸すという意味だ。


クラスは各学年3クラス。1クラスは30-37人。各クラスには、2名の担任(バイリンガルの日本人の先生、英語が母国語の先生)。理科、音楽、図工、体育などの科目は教科専門の先生が教える。これだけの先生が各クラスに関わる。そして英語、国語などはクラスを半分にわけて教えるそうだ。2名の担任がいることでそれを可能にしている。英語が母国語の先生が英語を教え、バイリンガルの日本人先生が国語を教える。少数の生徒に教えることでその効果を高めている。


もうひとつのこの初等部の大きな特徴は校舎が平屋建てで、オープン・エデュケーションだ。教室に壁がない。1年生と4年生のビレッジ、2年生と5年生のビレッジ、3年生と6年生のビレッジというように棟が分かれているが、全てつながっていて、しかも廊下側の壁がない教室が並んでいる。ビレッジ毎に行動することも多いそうだ。


各学年3クラスの構成となっており、例えば、1Aと4Aをツインクラスと呼び、更にその中で1人の4年生が1人の1年生の面倒を見るというバディーシステムを導入している。違う学年が一緒に行動し、関わることで、自然に上級生が下級生をサポートするようになっていく。

職員室はど真ん中にあるがやはり壁がない。生徒たちはいつでも先生と話が出来る。オープンという言葉は、全ての面で“型にはまった”教育や習慣にとらわれず、目標を持ち、自由な発想で工夫を試みること、そして常に風通しの良い空気を保つ特質を表している。


校長先生からは何度も「児童が学校生活のあらゆる分野の中心であり、児童に最善の教育を提供できるように全力を尽くしている」という言葉がでてきた。なんとなく聞き流してしまいそうになったが、授業風景の見学を通じその素晴らしさが理解できた。校長先生は先生が質問するのではなく、生徒が先生に質問するような授業を目指すよう日々先生たちを指導しているという。「教えることよりも学習すること」という原則を徹底している。


こういう学校生活を過ごしている生徒たちは、知的好奇心を育て、自分たちで課題を見つけ、主体的に学ぶようになり、生き生きと輝いていると校長先生は笑顔で語る。たしかにインターナショナルスクールに通う生徒と比べると英語の習熟度はまちまちだという。初等部では、特に耳を鍛えることに注力している。知的好奇心が育ち、中等部に入る頃になると語彙、表現方法を身に着け、英語は急速に上達し、バイリンガルになっていくという。


生徒の評価については、テストによる定量的な評価は勿論行っているが、授業への参加を重要視している。知識を身につけるだけでは不十分であり、その知識をどのように応用するかが重要だという。校長先生は、暗記は推奨していない。クリティカルシンキングが重要だと強調していた。


また、ITリテラシーに関する教育にも非常に力を入れている。4年生になるとパワーポイントを使ったプレゼンテーション、5、6年生になると、プログラミング、エクセル、ワードなどの授業を行っている。グーグルG-suiteを活用し、宿題、小テストなどを行っているという。校舎内には廊下のテーブルにタブレットも置いてある。いつでもリサーチ出来る環境が整っている。


音楽教室はさすがに壁があるが、音楽教育にはとても力を入れている。低学年の生徒は歌を歌う。耳を鍛えるためだという。高学年になると楽器の演奏が始まる。体育館はバスケットボールのコートが2面とれる広さだ。校庭も広い。特に低学年の生徒は、思いっきり校庭で活動できるように学校では運動着に着替えている。尚、生徒には登下校時には制服着用を義務付けている。何かに巻き込まれたときなどにぐんま国際アカデミーの生徒だとすぐにわかるよう安全対策の為にそうしているそうだ。


続いて、中高等部の見学と校長先生からの学校の説明。印象としては学校の作りは日本の高校、若しくは大学で、初等部とは感じは異なる。繰り返しにはなるが、受験は行っていない。初等部で学んだ生徒が中等部に、そして中等部で学んだ生徒が高等部で学ぶ。しかしながら編入は受入れている。テストと面接を行うとのことだが、学年相当の英語力を求めるのは当然だ。中等部は各学年約90名、高等部は約60-70名の生徒が学ぶ。先生は日本人と外国人が半々。


教育理念は初等部と変わらない。11年生からはIBDPを提供している。その教育の中心はアクティブラーニングだ。校長先生は、教育は「教師という絶対的な力を持つものが、授業の中で、生徒に対してその学びを強制することがあってはならない」と話す。毎日のように各クラスの授業風景を校長先生自ら見学しているという。360度評価も導入しており、生徒が先生を評価する。先生たちは大変だ。


しかしながら、校長先生がこの評価を使って、先生たちに対し叱責することはないという。校長先生という絶対的な権力者が先生たちに何かを強要しないという考え方からくるものだろう。先生たちのどんなところを生徒たちが評価しているかということを伝えているという。そうすると様々な研修プログラムに参加したいと手を挙げてくる先生が多いそうだ。素晴らしい考え方だと思う。


中等部、高等部共に学びの中心はアクティブラーニングだ。テストの点数を取るだけでは学習能力向上には繋がらないと校長先生は強調する。生徒による問題提起から始まり、リサーチを行い、ディスカッションを繰り返す。生徒自身が自分で問題に取組み、初めて力がつく。脳が活性化し、生徒の学習能力を高めることに繋がる。そのためには、教師自身が向上心を持って授業に取組むことが大切であり、教師と生徒が一緒に向上していくのを楽しむことが重要であるという。


「アクティブラーニングを通じて教師が生き様を生徒に見せる」と語る校長先生からは、学校の教育内容と生徒に対する絶対的な自信が伝わってきた。


ぐんま国際アカデミーは、イマージョン教育、オープン・エデュケーションを通じ、日本語を母語にする日本人が、英語を習得する。その特徴は知識・情報などの詰め込み、暗記ではない。グローバルな世界で新しい価値観を創造する人材育成を目指す教育。またひとつ素晴らしい学校を見つけた。初等部の生徒が学生寮で生活するというのはさすがに難しいかもしれない。しかしながら、中等部、高等部に学生寮があれば「より多くの生徒がこの学びを経験できるなあ」と思いながら学校を後にした。


https://www.gka.ed.jp/index.php

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