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執筆者の写真篠原竜一

篠原金融塾 インフレ率の上昇が止まらない グローバルマーケットウィークリー 10/28/2022

インフレ率の上昇が止まらない。


ヨーロッパ中央銀行(ECB)は27日、金融政策を決める理事会を開き、9月に続いて、0.75%の大幅な利上げを実施し、政策金利は2%に引き上げられた。また、銀行が中央銀行に預ける際の金利(中銀預金金利)も1.50%に引き上げられた。ECBは、理事会のあとの声明で「インフレは依然として高すぎる水準にある」とし、景気の悪化が懸念される中でもインフレの抑制を急ぐ姿勢を示した。


翌28日に発表されたドイツの10月の消費者物価指数(CPI)は、市場予想を上回り、欧州連合(EU)基準で前年同月比11.6%上昇。物価高で家計の負担は増し、企業活動も落ち込むなど、物価高と景気の減速が同時に進むスタグフレーションへの懸念が一段と高まっているとしか言いようがない。


そんな中、11月1~2日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。0.75%の利上げが予想されており、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3.75~4.00%に引き上げられる見込みだ。


今後の景気減速懸念から米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースが鈍化するのではないかという見方を受け、このところの債券市場では大きく買い戻しの動きがでているが、あまりしっくりこない。28に発表された9月の個人消費支出(PCE)は、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCEは前年同月比5.1%上昇しており、12月のFOMCでも引き続き0.75%の利上げが実施されると考えておいた方が良い。


日本も他人事ではなくなってきた。総務省が28日に発表した10月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は、前年同月比3.4%上昇した。今後も原油価格、商品価格など、原材料高の価格転嫁が進むものと思われる。


ECB, FRBを含め、多くのエコノミストが、トーンは随分変わってきたものの、景気減速を受け、引き続きインフレはある程度鈍化すると予想していることが気になる。


インフレが鈍化する兆候はない。ディスインフレの時代が終焉、インフレが高止まりする時代に戻ったのではないだろうか?


世界的に低成長の時代が待っている。経済成長率は労働人口の成長率と労働生産性の上昇の相互作用で決まるが、先進国の労働人口は総じて減少、もしくは労働人口の伸びが鈍化していると言えるだろう。ということは労働生産性が今まで以上に上昇していかないと経済は大きく成長しない。加えて医療技術の進展で長寿化がグローバルに進んでいる。労働人口に依存する高齢者が増える一方、少子化により若者の人口が増えない。反グローバル化の動きから、世界的に人手不足の状況になっている可能性は高い。これは簡単に解決する問題ではなく、その状況がインフレを高止まりさせている可能性がある。従って、低成長になっても思ったようにインフレ率が下がってこない可能性が高く、世界的に政策金利は想定外に引き上げられるような気がしてならない。




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