篠原金融塾 シリコンバレー銀行(SVB) グローバルマーケットウィークリー 3/17/2023
アメリカ市場が引き続き混乱している。ベンチャーキャピタル(VC)やVC出資のスタートアップへの融資を手掛けるシリコンバレー銀行(SVB)の危機を受け、他の金融機関にも同様の問題が飛び火するとの懸念から、アメリカの株式市場では銀行株に連想売りが広がっている。。
SVBは、コロナ禍で流れ込んだ大量の預金を元手に米国債・モーゲージ債を購入していたが、金利上昇に伴い債券価格が大幅に下落したことがこの問題の原因だ。今年に入って予想以上のスピードで顧客が預金を引き揚げ始めると、SVBは、「売却可能有価証券(AFS、日本のその他有価証券)のポートフォリオを実質的にすべて売却し、その代金を再投資することを意図して、普通株式と優先株の合計で約22億5千万ドルの資金調達をめざし、増資を開始、この資金調達の一環として、SVBの長年の顧客である世界有数の成長株ファンドであるGeneral Atlanticは、SVBの普通株式募集と同じ経済条件で5億ドルの投資を約束」と公表したが、9日の株式市場でSVB株は急落、10日に破綻した。
SVBに対してアドバイスしていたバンカーは一体何をしていたのか?20億ドル近い損失計上と株式発行による資金調達計画が発表されれば、投資家が動揺するのは当然だろう。
また、SVBに対してアドバイスしていたグローバルマーケット部門の担当は一体何をやっていたのか?モーゲージ債が最もアンダーパフォームする利上げ局面で何のアドバイスもしなかったのだろうか?
SVBは、債券保有額は、その他有価証券26bn満期保有有価証券91bnだった。米国債とエージェンシーモーゲージ債を保有してようだ。平均クーポンを見る限り、急激な金利上昇によるデュレーションのエクステンションリスクが大きいエージェンシーモーゲージ債のロークーポンを大量に保有していたものと思料される。
SVBの破綻を受け、この1週間、ファースト・リパブリック・バンクなどの中堅銀行から数十億ドルの預金が流出したと言われているが、国内最大手の銀行が共同で計300億ドルをファースト・リパブリックに預け入れた。預金した金融機関はJPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、ウェルズ・ファーゴ、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、USバンコープ、PNCファイナンシャル・サービシズなどと言われているが、気になるのは、これが根本的な解決策ではないということだ。中堅銀行からの預金流出は続くだろう。
事実としては、モーゲージ債、債券運用のことをきちんと理解していない銀行がモーゲージ債投資で大きな損失を計上し、破綻しただけのことだ。預金が全額保護されるとの報道を受けて落ち着くと思われたが、どうやら債券価格変動の対応に苦戦しているのはSVBだけではなさそうだ。流動性リスクを甘く見てはいけない。どんなに儲かっている銀行でも資金繰り倒産はありうる。
高騰するインフレと銀行の信用危機を同時に処理するのは難しい。先週は欧州中央銀行(ECB)が利上げを実施した。21〜22日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。その見方は分かれるが、ECBの50bpの利上げは、銀行危機にもかかわらず、連邦準備制度理事会(FRB)が今後も利上げを実施するとの見方を支持するものであり、あたらな銀行名が出てこない限り、今週0.25%の利上げが実施されると考えていた方が良いのでは?
グローバルマーケットにとって当面の最重要課題は、流動性リスクであり、今週あらたな銀行名が出てこないことを願いたい。
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