「海外留学は就職に不利」という常識が時代遅れとなる理由
幻冬舎ゴールドオンラインに寄稿しました。
衰える国力…日本はどこに向かっていくのか?
「世界で通用する人になってほしい」と、海外のボーディングスクールへの進学を検討する富裕層が増えています。一方で日本企業に就職を考えた際、不利になるのではないかと心配する方も多くいます。果たして、そうなのでしょうか。
確かに、多感な時期を海外で過ごした子供たちは、日本特有の企業文化、採用スキームなどに合わないとか、日本企業が求める人材とは違うとか、言われた時期もありました。
しかし状況は急激に変化し、先行き不透明感が増しています。たとえば国内の人口減少。国立社会保障・人口問題研究所は、全国将来人口推計(日本の将来推計人口)を行い、その結果を2017年4月に公表しています。対象は外国人を含めた日本に在住する総人口です。同研究所は、日本の総人口は、2053年には1億人を割って 9,924万人になり、2065年には8,808 万人になると推計しています。
ここまでが、オフィシャルな推計ですが、国立社会保障・人口問題研究所は、参考として2115年までの人口を計算しています。それによると、2115年には日本の総人口は、5,056万人まで減少すると推計しています。
江戸時代の日本の総人口は約3,000万人です。明治維新をきっかけに人口は急増し、1900年に約4,400万人になり、第二次大戦後の人口は約7,000万人になりました。その後は少子化時代に入ったものの、医療技術の発展で長寿化が進んだことを主因に人口は増え続け、2010年に1億2,806万人まで増えました。そんな日本の総人口の激減が始まるというのです。
もちろん出生率、外国人入国超過数によっては大きく変動するので、本当にこうなるかはわかりませんが、エコノミストの予想する1年後の景気予測とは異なり、移民の受け入れに慎重な日本では、将来推計人口の予想が大きく外れることはありませんでした。総人口がこんなに減少し、かつ老年人口が2025年には約3割を占めるようになり、2065年には約4割を占めるようになる日本は、どのような国になっているのでしょうか?
物すごいスピードで世の中が変わっていくことに加えて、世界の人口が引き続き増えるなかで、日本の人口激減時代がやってくるのです。おそらく我々の頭で想像する以上の変革の時代です。この国を維持、発展させていくためにはどうすれば良いのでしょうか?
国内需要は確実に大幅に下がるでしょう。物を買う人、サービスを受ける人の数が減るからです。今と同じ水準の供給を維持することはできません。どんなに良い商品、サービスを考えても国内の需要がどんどん小さくなっていくからです。
世の中の4割が高齢者、生まれる人より死ぬ人が多い時代が確実にきているのです。同じ水準の供給を維持するためには、輸出を増やして外国人に買ってもらうか、日本に観光で来た外国人に買ってもらうかしかありません。
政府も色々な対策は実施するでしょう。しかしながら日本の財政赤字はすでに巨額です。財務省のホームページを見ると日本の財政を月額手取り給料収入30万円の家計にたとえて説明しています。
この家計の毎月の支出は、生活費38万円、借金の元本返済7万円、利払い5万円となっており、計50万円です。給料収入とその他の収入は33万円なので、毎月17万円の借金をしてやりくりしています。その結果、この家計には現時点で既に5,379万円の借金の残高があります。
この状況について、財務省は、「家計の抜本的な見直しをしなければ、子供に莫大な借金を残し、いつかは破産してしまうほどの危険な状況です」と説明しています。
そんな中、最近では年金2,000万円問題(金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 )も話題になっていますが、内容としては以下の通りです。
夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では、実収入208,198円に対し、実支出263,718円と毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になるというものです。
この金額はあくまで平均の不足額から導きだしたものであり、不足額は各々の収入・支出の状況やライフスタイル等によって大きく異なると言っており、違和感はありません。しかしながら、この報告書が大きな問題となっているということは、社会保障費を大胆にカットすることは難しいものと思料されます。財政に占める社会保障費負担は今後も大きくなり、人口減のなか、日本の財政はより大きな問題になっていくということでしょう。
これからは「世界を渡り合える人材」が求められる
人口減、高齢化に合わせた形のビジネスモデルの構築を考える企業もでてくるでしょう。同時に「何を、どんなサービスを海外に輸出するのか? 何を、どんなサービスを日本に来た外国人に買ってもらうのか?」抜きではビジネスを考えられなくなる時代がきているのだと思います。日本に生まれ、日本で学び、育ってきた人に加え、海外に生まれ、海外で学び、育ってきた人たちの感性が必要な時代なのではないでしょうか?
物言う投資家が外国人経営者を送り込んでくることも増えるでしょう。そうすると外国人のマネジメントも増えていき、役員会も英語になるかもしれません。顧客の外国人比率が高まるわけですから、従業員の外国人比率も上がっていくでしょう。日本人であっても、外から見た日本の素晴らしさを理解できる体験、経験が必要になってくるまさにグローバル時代の到来です。
2019年11月1日から3日まで開催されるボストンキャリアフォーラムにはアメリカの大学、大学院で学ぶ学生が参加します。今年は、9月30日時点で238社がブースを出店することになっています。外務省、日本銀行も参加するイベントです。
フルタイムに加え、インターンのオファーを出す会社も多く、今では世界最大のキャリアフォーラムです。わざわざ日本からこのイベントに参加する日本人学生も増えてきているようです。
日本企業の新卒一斉採用は留学生に不利と言われていましたが、時代は変わってきています。各企業の採用担当者が毎年この季節にわざわざボストンに行き、アメリカで学ぶ学生を採用しようとしているのです。
中学3年から高校3年生という多感な時期にアメリカのボーディングスクールで学び、日本の大学、アメリカの大学に進学する日本人が就職で不利になるということはありません。むしろ就職には有利になってきているといえるでしょう。
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